空想 Ⅴ

今日も明るい光のなかに爽やかな花の香りが漂う

音楽が静かに流れ心はやすらぎの境地

ここは天国

蓮の花が ポン ポンと音をたてて咲いている

そのたびに一人 また一人 天国への入国者が増えてゆく

蓮園の傍で眺められる景色を想像した

「あっ、幸さん、どうしてここに、早すぎるでしょう!・・・」

「やあ、福じゃないか、君の居ない暮らしはつまらなかったよ

     どうしているかと思っていた、ここで会えるなんて・・・」

再会の元夫婦らしい会話が聞こえてきた

ここでは苦しみも悩みもない、香りだけで過ごしている

幸は歩道を歩いていたらビルの壁が剥がれて落下、あっという間に昇天

瞬間の出来事だったので痛みも苦しみもなく先ほど気が付いた

幸は自分がそこにいる事情をよく理解していないかもわからない


天国でこのように再会できるのは極めてまれで

ほとんどは会えなくてさまよっている

見渡す視界の端から端までが1光年もある

こんな広い場所を何日も何日も捜し歩かなければならない

江戸時代に逝った人や奈良時代に逝った人など

さまざまな服装の人々が行き交う

心当ての人はなかなか見つからない


なかには、さまよっていると言うのは当たっていなくて

再会の思いもなく無我の境地で瞑想に浸っている

聖人の心で静かに時を過ごす、これが天国らしい過ごし方


のどかな雰囲気、鳥のさえずり、清流のせせらぎ

そんな中、第599甦生花園では長い行列が

天国を満喫した人たちが下界への甦生を願って

順番を待っている

「甦生花」それは異次元へのタイムマシンで

女性の胎内へ届けられる

未来行き 現在行き 過去行き 異星行き

それぞれが好みの行き先を告げている


と すれば

何年か前に私もそのタイムマシンで地球に届けられたことになる

天国の記憶は全くない、どうしたことだ

誰かがその記憶を消してしまった、いったい誰が・・・

いや、地獄に居たと言うことも考えられる

そうだとしても記憶はない 私はなぜ 今ここに居るのだ
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by grand-ant | 2013-03-08 11:34 | 想い出
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